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Leader's

インタビュー

西川盛朗氏

ヨコハマコンサルティング(株)代表取締役会長

日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA) 理事長

FFIファミリービジネスアドバイザー 資格認定証保持者

元・ジョンソン社日本法人社長(CEO)、会長


世界的なファミリービジネスであるジョンソン社でコンシューマー(B2C)、プロフェッショナル(B2B)のプロダクトマネジメントを経験し、日本法人の社長、会長、グローバル本社の役員を務める。現在は世界有数のファミリービジネス、ジョンソン社での経験を活かしファミリービジネスのコンサルティングを行う。

自らの決意と覚悟、そしてオーソリティのない

リーダーシップ体験が本物を生んだ。

 

藤井:グローバルで活躍されてきた方に、これからの日本、日本人に求められてくることや、御自身が現在に至るまでにどの様なエポックメイキングがあったのか等をお伺いする継承プロジェクト、第3回目は、世界有数のファミリービジネスのジョンソン社で日本トップとしてご活躍され、現在はヨコハマコンサルティング株式会社代表取締役会長として多くのファミリービジネスのコンサルティングを手掛けていらっしゃる西川盛朗さんにお話をお伺いいたします。本日はよろしくお願いいたします。

 

西川:よろしくお願いします。

 

藤井:さて、早速ですが、本日は入社式に出られてからいらしていただいたということですが、近年、若い人達を見ていると、若さやエネルギーを感じる一方で内向き志向であるとも言われていますが、そのあたりはどう見ていらっしゃいますか?

 

西川:そうですね、今日は私が社外取締役をやっている企業の新入社員の入社式だったのですが、新しい若い風が入ってくるというのは、いいものですよね。一方で、若い方はみんな画一的だなと感じることも少なくないですね。話す言葉、話す内容、挨拶、みんなマニュアル化ですね。それはそれで社会が求めているような新人像なのでしょうけれども、見ていて今の日本の現状を感じます、個性を殺してみんな同じような感じになっていくことが良しとされている。

 

もちろん、だからダメだということではなくて、入社した後にどの様に育成していくかということが重要だと思っています。入社するとまずは自分に与えられた仕事を覚えようと必死になるわけですが、それだけに終始するのではなく、やはり、外からの視点を必ず持つようにしてほしいですね。

 

新聞を毎日隅々まで読むのは当たり前かもしれませんが、記事の中で3つでいいので重要だと思うものを拾い、それが自社にとってどの様な影響があるのか、自分にとってどの様な影響があるのかという視点から考え、それを踏まえて「こうしたい」「こうしなくてはいけない」というところまで落とし込むことを習慣化させていくことが大切だと思っています。

 

これを3年5年と続けていくことで、人はとても大きく育つと思っています。画一的な視点ではなく、大局的な視点から物事を捉え、相関性を理解し、その上で今何をするべきかという行動まで落とし込めるようになってくると良いと考えています。

 

藤井:ある一つの事象がどういう影響があるのかということを考え抜くということが大事ということですよね。全く同感です。特にこれからの社会の中では必要になってくる視点でしょうね。

 

西川:そうですね、もちろん目の前の仕事を出来るようになることも大切ですけれども、同時に外からの視点を持つことを忘れないでほしいですね。

 

私は外資系企業で40年も仕事をしてきましたけれども、その中で学んだことの一つは「So what?」の視点なんですよね、知識を持っているだけではなく、「だから、自分にとって、会社にとってどういう影響があるのか?」という視点から全ての知識や事象と向き合うことで、新しいチャンスが生まれてくるのではないでしょうか。 

 

藤井:西川さんは外資系企業の社長をやってこられて、現在はファミリービジネスコンサルタントとしてご活躍されておりますが、現在に至るまでにどの様なエポックメイキングがあったのかをいろいろお伺いしていきたいと思います。宜しくお願いいたします。

 

レールが敷かれた仕組みに違和感を感じ、外資系企業へ飛び込んだ。

 

西川:私は愛知県の生まれでして、いわゆる三河地方というトヨタが生まれた土地で生まれ育ちました。「贅沢はしてはいけない、慎ましく生きなさい、それでもお金は貯めなさい、そして大切な時にそのお金を使いなさい。」という質実剛健という気質の環境で育ちました。

 

そして学校を出てから最初に、名古屋の会社に勤めることになるのですが、3年経ったら主任、5年経ったら係長というようなレールが敷かれた仕組みに違和感を覚えまして、もっと若くても大きな仕事を任せてくれるような環境は無いだろうかと考えていました。まあ、若気の至りだったのかもしれませんが、外資系だったらもっと若くてもいろいろチャレンジングな仕事ができるのではないだろうかと思っているところに、ある方から勧められジョンソン株式会社という外資の企業に転職しました。これが私のキャリアにおいて一番最初のエポックメイキングになっていると思いますね。

 

グローバルでのあり方に影響を受けた師との出会いと、チャンス溢れる環境。

 

西川:ジョンソンは当時、日本ではまだ小さな会社でしたが、私としては”小さいところから大きくしていく”というほうが面白いと思っていました。当時の社長は外国人の方だったのですが、私が入社してしばらくした頃に、当時専務をやっておられた小山八郎さんという方が社長になりまて。小山さんは、後に日経連の副会長をやられる方なのですが、その方が私にとって大きな影響を与えてくださった方でした。

 

藤井:小山八郎さん、有名な方ですね、本も出されていたと記憶しています。小山さんからはどの様な点で一番影響を受けられたのでしょうか?

 

西川:グローバル企業の中で、日本人としての誇りを持ち、その上でグローバルの中で主張するということを実践されていた方でして、それよって日本人はとても尊敬されるということを私も何度も目の当たりにしましたし、同時に私もそうでありたいという強い想いを持つことができたことですね。

 

日本の組織の中でどう立ち振る舞いをするかということではなく、グローバルビジネスの中で自分の仕事、日本人のアイデンティティをどの様に示していくのか、それによって相手側が人を見る目が変わってくる。

 

小山さんは海軍の将校だったので、叱るときも軍人の叱り方でしてね、「貴様!」という感じでして、まさか外資系企業に来て「貴様!」と言われるとは思ってもいませんでした。そういう一面もあったのですが、非常に暖かい人でしてね。厳しさと暖かさの使い分けというのが非常に素晴らしかったですね。 

 

日本経済が立ち上がっていくタイミングで、小山八郎氏という素晴らしいリーダーに出会い指導していただけたことや、たくさんのチャンスをもらえたということは本当に恵まれていたと思いますね。最初に日本の企業に入って、少し自分の肌に合わなかったという違和感を感じ、飛び出したことというのは、大きなターニングポイントになったように思いますね。

 

グローバル企業に入って、小さな会社をみんなで大きくしてきたわけですが、小さな会社を大きくするということは、あらゆる事を自分達の責任、自分達の手でやっていかなくてはいけない。そういう環境ではやはり人は育つと思いますね。

 

プロジェクトの全責任を持つプロダクトマネージャーとしての経験が、強いリーダーシップを育てた。

 

西川:私は会社ではマーケティングを専門にやってきまして、最初はB2Bビジネスをやっていまして、その後B2C、いわゆるコンシューマービジネスのマーケティングを担当することになるのですが、このジョンソンという会社は日本で初めてじゃないかと思うのですが、プロダクトマネージャー制度を取り入れた企業だったんですね。

 

私はプロダクトマネージャーになったわけですが、プロダクトマネージャーとは、一つの事業・ブランドをゆりかごから墓場まで全部責任を持って実行する、当然PL責任もある。自分で全てのことを考えながら、担当した製品なり、ブランドなり、事業なりをひとつの小さな会社の経営者のように意思決定をしていくわけです。

 

プロジェクトのメンバーというのは必ずしも自分の部下ではなく、それぞれの担当分野を持つ年上の方であったり、目上の方であったりとたくさんいらっしゃいました。その中でも損益の責任を持つのがプロダクトマネージャーですから、どの様にオーソリティの無い立場で組織なり人なりリーダーシップを発揮していくのかということを様々な体験を通じて学びましたね。

 

多くの製品・ブランド・事業を1から10までを責任と覚悟を持ってやってきたという長年積み重ねた経験が、小さな単位での社長訓練になり、その後社長になった時にも大いに役に立っています。

 

常に成長させていかなくてはいけない、常に利益を上げていかなくてはいけないということを切羽詰った気持ちで若い頃からやっていましたから、非常にいい経験になりましたね。オーソリティがあって部下に「やれ!」というのは比較的容易かもしれませんが、直属の部下は数名でそれ以外はほとんどが目上の方、更には外部との折衝、全て中心になってやらなくてはいけませんでしたから、オーソリティの無いリーダーシップという貴重な経験が積めたと思っています。

 

最初からマーケティングだったわけではなく、入社当時は営業として入ったのですが、営業時代にいろいろと自分なりに企画を作成し、成績を上げていたのを見た本社の事業部長が、「こいつはマーケティングをやらせたら良いのではないか」と言って引きあげてくれたんですね。それからずっとマーケティングで、プロダクトマネージャーとして様々な製品やブランドを手がけてきました。仕事の上でのエポックメイキングというのは、このプロダクトマネージャーとしての経験が一番かもしれませんね。 

 

自ら価値を0から生み出していく経験の積み重ね。

 

西川:”外資系企業”というのは2種類あると思っていまして、ひとつは、海外で成果が出ている商品やサービスをそのまま持ってきて日本で売るという販売会社のような会社。もうひとつは、海外のものが日本市場で通用せずに、日本のマーケットの中で新しい価値を生んでいかないといけない会社があると思います。ジョンソンは確実に後者でしたね、つまり、海外のものが売れないんですよね。

 

私が担当した時も最終的に売上や利益に対する責任はあるが、会社から与えられたプロダクト・カテゴリーあるいはグループの事業は、当時の日本には合わなかった。そうなってくると新しい価値を生み出していくほかない。それが日本のジョンソンのおかれた立場でしたので、外資系ではあるのだけれども、あまり外資系であると感じたことがありません。

 

B2Bを10年やってからコンシューマーに移ったのですが、B2Cの最終的なエンドユーザーは”主婦”なんですね。ですから主婦のニーズやウォンツを知るために、家内の友人を10名集めて、お茶会を開き、いわゆる主婦モニターとしてその中でいろいろな話を聞きながら自分の感覚を磨いていきました。

 

そういった地道な活動の中で少しずつ固まってきたものを、会社の中で製品のアイデアとして組織的に拾い上げていくことに結び付け、その中でコンセプトを開発して、そして製品化していくという、コンセプト&プロダクトディベロップメントということをコンシューマーの時に相当やりました。

 

外にあるものをいかにして翻訳して売れるようにするかということではなく、当然ゼロからですからね。トップの小山氏もグローバルな会社の中にいらっしゃるのだけれども、非常に軍人としての生き様を見せるような人でしたから、そういう意味でもあまり外資系だということを意識したことは無かったですね。

 

当たり前の外資系ではなかったことがもたらした醍醐味。

 

西川:主婦モニターを組織的に実施しまして、新製品のアイデアになるヒントを100くらいそこから得ていたのですが、私はそれをコンセプト化し、主婦の関心度の高いものをランキング化して持っていました。

 

その中で、私が直接手掛けたもので代表的なものを一つ申し上げますと、「カビキラー」ですね。あれは当時日本には無かったカテゴリーでして、今でこそ”お風呂のカビ”と皆さん言いますけれども、当時はカビのことを”お風呂の黒い汚れ”と言っていました。そして主婦モニターの中で「あの黒い汚れはゴシゴシとこすってもなかなか落ちない。」という不満があることがわかったのです。プロから見れば「カビ」なのですが、素人から見たら「黒い汚れ」なんですよね。その不満のポイントとギャップを我々が発見したわけなんです。

 

当初、私たちがそのコンセプトを作っても、すぐにマーケットリサーチ部門も研究開発部門も動いてくれませんでした。彼らは他にも様々なプロジェクトを抱えていましたし、この案件についてはまだ具体的なニーズ等の検証がされていなかったという理由がありました。当時私はグループプロダクトマネージャーと言って、何人ものプロダクトマネージャーをまとめている立場でしたので、私と担当のプロダクトマネージャーで、試作品とコンセプトカードを作成して一緒に団地で60件か70件回りました。コンセプトカードを見せて、”使ってみたいかどうか”という5段階のアンケート調査を実施しまして、その中でも特に「是非使ってみたい」というマーケティング用語で言えばトップボックスの層に対して商品の試作品を渡し、1カ月モニターとして使ってもらいました。1カ月経ってモニターアンケートを回収してみると、驚くほどのハイスコアでした。

 

先ほど申し上げたように、プロジェクトチーム全体に対してオーソリティが無いわけですから、そうやって地道に集めた客観的なデータを持って、研究開発やマーケットリサーチを動かしまして、ようやく全社のプロジェクトに上げました。最初のコンセプト開発から考えるとそこに至るまでに数か月かかりましたね。

 

その後いろいろな調査を実施して、社内でも”良さそうだ”ということになり、九州地区でテストマーケティングを実施しました。実際に製品を作って、TVCMを打って、販売してみたら、ものすごいハイスコアが出たんですよね。それで本格的に取り組もうということになるのですが、テストマーケティングの段階で一つ大きな懸念がありました。

 

その懸念というのは、カビキラーの主成分は漂白剤と同じで、目に入ったり、吸い込んだりするとあまりよろしくないわけです。だから飛散しないように霧状ではなく泡にしているのですが、使う時に窓を閉め切っていたりすると気分が悪くなったり、手に付着して痛くなったとか、テストマーケティングの段階でクレームも少なくなかった製品だったんですよね。クレームも多かったのですが、カビを取る効果がすごいので総合評価が非常に高く出ました。

 

私たちはカビキラーを全国で発売する前に、そのクレームをできるだけ小さくなるような改良や対処法を徹底的に行い全国導入に踏み切りました。今までに無かったカテゴリーであり、爆発的に売れましたね。既存のマーケットに商品を投入するのではなく、「黒い汚れがなかなか落ちない」という声からコンセプトを開発し、新しいマーケットをクリエイトしたことが最大の勝因ですね。今でもあの分野ではナンバーワンの商品です。

 

海外の商品を持って来て、日本市場でそのまま導入するのではなく、逆に私たちが日本で開発し、日本からマーケティングのあり方や製品開発の仕方を海外に知らしめていったわけです。こういったクリエイティブな仕事ができたことは、ジョンソンが”当たり前の外資系”ではなかったことがもたらしてくれた醍醐味なんじゃないかなと思いますね。

 

リスクを恐れずチャレンジし、正念場を乗り越えてきた経験の積み重ねが強い リーダーを育てた。

 

西川:私はB2BでもB2Cでもいろいろなモノをやりましたが、常にリスクもありましたけれども、チャレンジし、成果が上がって、それをみんなでシェアしていくというのが一つの大きなモチベーションになっていきましたね。失敗もたくさんありましたが、成功の確率は高かったと思いますね。

 

マーケティング責任者として、全て自己責任で覚悟を持ち、数々の製品をゼロからコンセプトを生み出して製品化し、流通させていく。ゼロから全てのプロセスを作り上げていくということを本当にいろいろな製品・カテゴリー等でたくさん経験してきたことは、後にコンシューマーの全体のマーケティング責任者になったり、常務、専務、代取の副社長、そして社長になったときにも、ゼロから全てをクリエイトしていった経験がものすごく役に立ちました。

 

後に日本法人の社長、会長をやりますけれども、私が社長になった時にバブルが崩壊しましてね、殆どの日本企業は苦労していました。その中で10年位社長をやりましたけれども、その間に売上を何倍にも、利益ももっと改善できました。全社員に「こんなチャンスはめったにない」と元気づけ、M&Aもいくつかやりました。やはり今の商品だけだと必ず尻すぼみになる、だから次の新しいチャンス、新しいシナジーを生んでいこうということを常に考えてやっていましたね。

 

失敗もたくさんありましたが、こういった成果が出せたのは、やはり若い頃からのプロダクト・マネ―ジャーとしてゼロから作り上げるという豊富な経験が基になっていました。当然その中には大小はあれど、いくつもの困難な局面がありましたし、そういった経験を乗り越えてきたから対応できたのではないかと思いますね。

 

後編:自らが求め、自らが行動する、オーナーシップ・イニシアティブが重要
 

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前編インタビューを終えて 藤井義彦

 

西川氏がハーバードAMPへ行かれる際に、私の最初の著作「挑戦!!ハーバードAMP留学」を読まれ、私を訪ねてきてくださったのが最初であった。それ以来西川ご夫妻とは長いお付き合いをさせていただいている。

 

常にダンディな紳士である。自分に厳しく、常に自分を律し、他人に細やかな配慮が自然にできる方とお見受けしていたが、今回のインタビューを通して詳細なキャリアをお聞きして納得がいった次第である。

 

「贅沢はいけない。慎ましく生きよ。お金を貯めなさい。そして大切な時に使いなさい」という三河の気質で育った西川氏は外資系企業で、海軍出身の小山八郎氏の薫陶を受け、全てに責任を負う”プロダクトマネージャー”として「オーソリティの無い状態」でのリーダーシップを発揮し、数多くの製品・ブランド・事業を手掛けてこられている。自分で考え抜き、社内外の人を巻き込み、そして実践の中で成果を上げていく、まさに今求められるグローバル・リーダー像ではないだろうか。

 

自己を律し、創意工夫する姿には深い感銘を受ける。

このインタービューでは語られなかったが、西川さんは素晴らしい伴侶に恵まれている。大らかで明るく西川さんを随所で大いに支えられたのに相違ない。

 

北里光司朗氏

国際キワニス日本地区ガバナー

元BTジャパン(株)会長

藤田実氏

オグルヴィアンドメイザージャパン 名誉会長

西川盛朗氏

ヨコハマコンサルティング(株) 代表取締役社長 元・ジョンソン社日本法人社長(CEO)、会長

今江博之氏

日本ジョンクレーン(株)代表取締役社長

渡邉健太郎氏

エコラボ合同会社    代表取締役社長

原田武夫氏

IISIA 原田武夫国際戦略情報研究所 CEO

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