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Leader's

インタビュー

西川盛朗氏

ヨコハマコンサルティング(株)代表取締役会長

日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA) 理事長

FFIファミリービジネスアドバイザー 資格認定証保持者

元・ジョンソン社日本法人社長(CEO)、会長


世界的なファミリービジネスであるジョンソン社でコンシューマー(B2C)、プロフェッショナル(B2B)のプロダクトマネジメントを経験し、日本法人の社長、会長、グローバル本社の役員を務める。現在は世界有数のファミリービジネス、ジョンソン社での経験を活かしファミリービジネスのコンサルティングを行う。

自らが求め、自らが行動する、

オーナーシップ・イニシアティブが大切。

 

 

影響を与えた人物「伊藤雅俊氏」

 

藤井:グローバル環境下で勝負するあり方を学んだ小山八郎氏との出会い、外資系企業でありながらも、自らがゼロから商品・カテゴリ・事業をクリエイトしていく環境で、多くの挑戦と成果を積み重ねてこられた。出会いと経験は人を成長させるための最大のエッセンスであると思いますね、小山八郎氏の他にも影響を受けた方はいらっしゃいますか?

 

西川:イト―ヨーカ堂の伊藤雅俊さんにも大きな影響を受けていました。ある時アムステルダムでご一緒する機会があったりました。当時まだ社長をやっておられたのですが、我々のアムステルダムのジョンソンの工場へお連れしたり、その後もいろいろと勉強させていただく機会がありました。

 

商売には大変厳しい方でしたが、人を育てる点では感心する事ばかりでした。今のセブン&アイのベースになるあらゆるものを人材という点でもお育てになったのではないかと思いますね。

 

あるときピーター・ドラッガーの講演がありまして、たまたまその講演に行った時に伊藤さんがいらっしゃってご挨拶をさせていただいたのですが、その際に「ちょっと西川さんいいかな?」と言われましてね、立ち話をし始めたら「君ねぇ、何々店の在庫を見たのだけれども、あれはおかしいじゃないか!」とジョンソンがやっている仕事のことで叱られました。そんなところまで見ておられるのかと驚きましたね。その時私はその分野の社長をやっておりまして、伊藤さんから「君の責任だよ!」と叱られましてね、それはもう、小山さんに叱られるより怖かったのを覚えています。

 

その反面たいへんやさしいお心遣いをされる方で、私が専務だとか常務だとか副社長になったタイミングなどには、必ずお祝いのメッセージなどを頂きました。こんな気遣いを、若輩者にしてくださってと大変感激をしたこともあります。叱られた件もそうですが、細部への目配り、気配り、心配りを始め、多くのことを学ばせていただきました。

 

伊藤さんにしても小山さんにしても仕事に対しては大変厳しい方でして、そういう方と巡り合い、育てていただいたというのは今の私の血肉にもなっていますし、本当に感謝していますね。

 

影響を与えた人物「八城政基氏(元エッソ石油取締役社長)」

 

もうひとり影響を受けた方といえば、八城 政基氏(元エッソ石油取締役社長、元シティコープジャパン会長、元新生銀行取締役会長)、私は日本のグローバルパーソンとしてお一人挙げろと言われたら、この方を挙げますね。

 

グローバルの会社で外部から人材を探す時には、必ずある面で成功した人を引っ張ってきますけれども、これは成功する人は成功する要点を押さえているから成功するという事が世界的に分かっているからですね。

 

成功のパターンを知っちゃった人、どの要点を押さえれば成功するのかを押さえられる方はやっぱり見方が違う、ということは私は八城さんに教わりました。

 

私は外資系の社長でしたが、先ほど申し上げた通り、海外から商材を持って来ても売れないので、自ら生み出して戦わなくてはいけない環境にあり、そういった経験をたくさん積み重ねてきました。

 

当時私は日本の会社の社長をやりながら、本社の役員も兼ね、5つに分けた世界のリージョンのリージョナルプレジデントも兼務していました。当時私が何かやろうとするとほとんどの事ができていまう権限もありました。それで、これは危ないと思い、社外取締役を3人招聘し、取締役会で厳しい目できちっと発言し指導して頂こうと思いました。

 

そのうちの一人として当時シティコープの日本代表をなさっていた八城さんにお願いをしました。ヘッドハンティング会社等を経由せずに、私が直接お伺いしてお願いをさせていただきました。すると翌日電話が掛かってきまして「喜んでお受けいたします。」と受けていただいたんですよね。 

 

そういう経緯で、社外取締役として来ていただいたのですが、取締役会でもピシッとポイントを突かれるんですよね。遠慮なくガンガンやっていただいた事も本当にありがたかったですし、個人的にも良くして頂いて、いろいろなことを学ばせていただきました。本当に素晴らしい方にお願いできたと思いましたね。

 

自主自立、逞しさ、オーナーシップ&イニシアティブが今求められている。

 

藤井:素晴らしい方々とのそういったご縁は、やはり西川さん自身が積極的にアクションをされてきたからからということもあるでしょうね。

 

西川:そうですね、本当に素晴らしい方々とご縁が持てたことに感謝しています。私自身もそういう方々の身近にいるということを意識していましたし、やはりそういうものは自分から求めていかなくてはいけないと思うんですよね。

 

今の日本の現状を見ていましても、求められているのは、逞しさだとか、自主自立、オーナーシップ&イニシアティブなんですよね。これこそが今の日本人に求められることなんじゃないんでしょうかね。

 

西川:数年前に村上龍氏の著で「希望の国のエクソダス」という中学生を書いた本がありましたよね、あの中で、「日本には全てあった、でも日本には希望がない」という言葉がありました。日本人というのは全て与えられている、与えられ、指示されることに慣れてしまって、何かあったらお上、つまり国が悪いと言ってしまう。”希望”と言うものは他人が与えてくれるものでなく、自ら求め探し出すものではないでしょうか。

 

いつの間にか、逞しさや自主性を求める風潮は消えてしまいましたよね。何かあれば誰かに頼るというのは、世界では通用しませんからね。誰も助けてくれない、自分で切り拓いていかなくてはいけない、自分で戦わなくてはいけない、それでやっと今日の食事にありつける。それが世界ですし、ビジネスの世界も一緒だと思うんですよね。

 

日本は、全て自国の中で消化できるような仕組みを備えていましたし、人口も1億2千万人、マーケットもありました。戦後ずっとそういう時代がずっと続いていましたが、今は少子高齢化も急速に進んでいますし、与えられることに慣れて、受け身な姿勢の人が増えてしまっている中で、急にグローバル化が大事だ、世界が大事だと言われている。

 

そういった部分の教育を早いうちからやらせないといけないですよね。語学教育にしてみても、ようやくTOEFLとかTOEICとかを大学の入試とかに入れるとか入れないとか言い始めているようですけれども、英語の教育ひとつ見ても、中学・高校・大学と10年も勉強して何にも話せない、それでテストに合格して卒業できてしまうっていうのはおかしいと思いますけれどもね。

 

やはり、先ほども申し上げましたけれども、自らがオーナーシップを持って、イニシアティブを発揮して、自ら働きかけるということこそ、今まさに求められていることなのではないでしょうか。個々がそういった自主性・オーナーシップを持っていなければ、日本のグローバル化なんていうのは小手先の事は言えても、本質的には変わらないのではないでしょうか。

 

危機感の無さが行動できない原因。

 

藤井:まさにそうですね、福沢諭吉があの時代に言っていた「自主独立」。自分をしっかりと持ち、もっとしたたかに生きていかなくてはいけない。まさにそういった要素が今必要だと感じています。そういうことを理解している人でも、中々行動できなかったりする現状があると思いますが、そのあたりはどうお感じですか?

 

西川:その点は、私は“危機感の無さ”だと思いますね。危機意識を持っていないと、本当に食っていけなくなる、会社が潰れるかもしれないという状況、自分が食っていけなくなるという状況に陥らないと行動できないんでしょうか。

 

危機感を持たないのは、この幸せな日本がみんな明日も続くのではないかと思っているのではないでしょうか。 昨年1000万以上の負債を抱えて倒産した企業が12000社もあります。私はファミリービジネスの研究ををずっとやっていますが、昨年のデータで創業100年を超える企業が日本には1900社もあるんですよね、これは、おそらく世界一です。ですが、10年前に90年を超えた企業は2600社もあったのですよ。つまり、この10年で700社、3割の歴史的企業がこの日本から消滅したということです。このような事実が足元にあるわけです。

 

長寿企業の多くは、酒屋さん、味噌醤油、旅館業など、このあたりの伝統産業は古くからありますけれども、こういった産業のほとんどは国内の需要で賄ってきた背景があります。ですが、今はそれだけではやっていけない状況になりつつある。しかしそういう背景の中でもとても元気にやっていらっしゃる企業もたくさんあるんですよね。

 

事業を継承するということでも、日本では事業継承というと相続税対策なんですよね、だけど、私が申し上げているのは、「事業継承で最も重要なのはファミリービジネスのマネジメントですよ」ということなんですね。もちろん相続税対策も大事だけれども、競争力をつけて明日また成長できることのほうがもっと大事ですよね。どうしたら競争力をつけることができるのか、どうやったら永続性を確保できるかということが日本の企業に問われているのではないでしょうか。

 

サラリーマン化した日本企業はオーナーシップを取り戻し強くなる。

 

西川:海外の企業と日本の企業、何が違うのかということを見ていますと、大きく言いますと、日本の大企業はサラリーマン化してしまったように思えますね。それに比べると海外の大企業の多くはオーナー系企業なんですね。世界一の企業を挙げてみても、家具はIKEAですし、流通はウォルマート、タイヤはミシュラン、車はトヨタ、これら、全部ファミリービジネス、オーナー系企業なんですよね。

 

日本の大企業が弱くなくなってきているのは、やはり、大企業にオーナーシップが無くなってきているからではないでしょうか。2期4年、3期6年というようにトップが変わってしまったら、大きな改革なんて一向に進みません。それからコンシステンシー(継続性)、つまり一貫性ですね、前任者を否定して新しいことをやろうとする傾向がありますが、その中には否定してはいけないこともたくさん入っていたりします。企業が持たなくてはいけないコンシステンシーというのを、このサラリーマン社会が潰してしまっていますよね。

 

世界一の企業を見ていても、オーナーシップのあり方、覚悟や考えるタイムスパンも違いますよね、日本の企業が弱くなっている最大のポイントはオーナーシップが無くなったということが言えると思いますね。

 

世界に200年以上継続している企業は約5000社あって、その中の6割、約3000社は日本にあるんですよ。昨今、そういった伝統的企業が抱える課題はたくさんありますけれども、彼らが持っている仕組みや、企業がずっと持ち続けている理念、価値観というのはとても大切なのですよね。

 

私はジョンソンという127年間続くファミリービジネスに40年間おりましたけれども、私自身はそのファミリーが大切にしている価値観に守られて、自己実現ができたと思っているんですね。ですが、世の中ではファミリービジネスというと「スキャンダル」と言うイメージが先に出てきてしまう。

 

ファミリービジネスは誇り得る経営形態であるということを取り戻して、今後どうしていけばいいのかということの助言ができれば日本のファミリービジネスが元気になるのではないかということが、今の私の根幹にある想いですね。

 

これから日本を引っ張っていく人へのアドバイス。

 

藤井:オーナーシップ&イニシアティブ、自主自立、いろいろなメッセージをいただきましたが、最後にこれからの日本を引っ張っていく方々へ何かアドバイスをいただけますか。

 

西川:大切なのは”外を知ること”ですね。国民も企業も同じだと思います。

外からの眼で自国や自社を見ると様々な事に気がつき、どうすべきかが分かってくると思います。

 

知ること、見ることをしたうえで、今置かれている立場がどういう立場なのかを理解できるでしょうし、そうすれば、今何をしなくてはいけないかということが理解できる。

 

そしてもう一つ、人間には憧れというものが大切です。徐々に憧れの無い社会になりつつあるのではないでしょうか。今あまり不自由がないから現状から出る必要性も感じない。だから求めない。現状の与えられている環境が永続的に続くのではという思考は危険ですよね。自分から求めていかないと誰も何も与えてはくれません。

 

突き詰めていくと歴史観なのでしょうか、日本は食べ物もなく、家が焼かれてしまったこともあったわけですよね、そして急成長して豊かになった後に、子供にはそんな想いはさせたくないという想いからか、親はある意味責任放棄をしましたよね。

 

どういう事かと申しますと、親の一番の責任は、子供を自立させることだと思うんです。自分で生きて、自分の足で歩いていけるようにする事こそ、親の最大の責任だと思っています。ですが、いつまでも親の保護のもとに置いてしまっている。親だけでなく、社会全体が過保護になり過ぎてしまったようにも思えますね。そういった時代だからこそ私は企業の教育が大事だと思っています。

 

もちろん最終的には自分自身がその気にならなくてはいけないですからね。そのためにはまず知ること、そして本当に自分はどうありたいのかということを考え、それを自らが求め、考え、行動することではないでしょうか。 

 

 

 

後編インタビューを終えて 藤井義彦

 

小山八郎氏、伊藤雅俊氏、八城政基氏という超一流の人物から影響を受けた西川氏。一見めぐまれた環境は与えられたのではなく、自ら望み、自ら求め、自ら行動し掴み取っている。与えられることに慣れてしまった今の日本人に欠けている大きなポイントなのではないでしょうか。

 

「日本には全てあった。でも日本には希望がない。」と村上龍氏の作品を引用も出てきましたが、昨今のグローバルな環境は、自らが望み、求めて、行動すれば様々なチャンスが手に入る。その様な環境下で口を開けて待っているのではなく、自らが行動していくことで道が拓けてくる。希望を持ち、自らの足で一歩踏み出していく。”オーナーシップ&イニシアティブ”まさにこれからの日本に必要なキーワードかと思います。

 

現在の日本に欠けているのは「逞しさだとか、自主自立、オーナーシップ&イニシアティブ」であると。127年間続いたファミリービジネスのジョンソンに40年間在籍した西川さんが、その実体験と豊富な知識を活かして、日本のファミリービジネスを元気にする助言をしていく。何と素晴らしいことか。

 

「日本のファミリービジネスを元気にする、今がまさに私の青春なんですよ。」と力強く語る西川さんに期待するところ大である。益々のご活躍を心からお祈りしています。

北里光司朗氏

国際キワニス日本地区ガバナー

元BTジャパン(株)会長

藤田実氏

オグルヴィアンドメイザージャパン 名誉会長

西川盛朗氏

ヨコハマコンサルティング(株) 代表取締役社長 元・ジョンソン社日本法人社長(CEO)、会長

今江博之氏

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