私たちがリーダーとして社会づくりをし続けるために必要な5つのEと1つのP
リーダーシップには大きく分けると2つの種類があると言える。リーダーシップと言うと、多くの人は、部下や顧客などのフォロワーに対するリーダーシップを想像するかもしれない。そしてその他人に対するリーダーシップの影響力を高めるために重要なのが、自分自身に対するリーダーシップである。
自分と他人に対する2つのリーダーシップを最高度に発揮した経営者の一人がジャック・ウェルチ氏である。1981年から2001年まで20年間ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者を務めた。在任中の業績は利益が600%増加、100四半期連続売上高増加。さらに世界最高の収益を誇る企業に育て上げた。1999年には「フォーチュン」誌で「20世紀最高の経営者」に選ばれ、最高時の年収は9400万ドル(120円換算で約11億円)という。
ハーバードAMPでもケース・スタディで組織の再編成等、彼の経営論を学んだが、
その基本的な経営手法は:
①大規模な「リストラ」「ダウンサイジング」による資本力の向上
②「世界で1位か2位になれない事業からは撤退する」と宣言。”選択と集中”を経営の軸とした。
会社を守るために、整理解雇を優先したことから「ニュートロン・ジャック」の異名がある。
建物を壊さないで人間のみを殺す中性爆弾の意味である。
ジャック・ウェルチは日本の従来の経営者とは全く肌合いの異なる経営者であり、その意味から私が行う研修では必ず彼のリーダーシップ論を紹介することにしている。
ジャック・ウェルチのリーダーシップ論で代表される、GEのリーダーに必要な”4つのEと1つのP”というものがあるので紹介しよう。
① ENERGY (自らが活力に満ち溢れていること)
② ENERGIZE (目標に向かう周りの人々を元気づけること)
③ EDGE (タフな問題に対しても決断ができること)
④ EXECUTE (言ったことをとことんまで実行していくこと)
⑤ PASSION (情熱)
(出所:「Jack :Straight from the Gut」Jack Welch with John A.Byrne. Warner Books 2001)
ジャックはENERGYを最初に挙げ、リーダーはまず自分自身がエネルギーに満ち溢れないといけないと説く。
自分の心と身体をコントロールして最高の輝く状態にする。そして常に自分を高め続けるのだ。即ちセルフ・リーダーシップの実践である。
②-④は 他人に対するリーダーシップの要諦だ。自分がエネルギーにあふれているからこそ、他人を元気づけることができるのである。そして経営者が最終判断をしないといけないタフな問題(たとえば人員の整理解雇、工場閉鎖等々)に対して果敢に挑戦するのだ。
自分の組織を最強のチームにして、チーム全員で決めた戦略・戦術とことんまで実行、業績を上げていく。①から④の根底には⑤のPassion(情熱)がある。このようにしたいという貴方の夢:想いが情熱という燃料となり企業を成長させていく。
残念ながら私はジャック・ウェルチ氏と面識はないが、機会があれば会ってみたいと思っている。さぞかしオーラの輝く経営者なのだろう。
私は持論として、ジャックの4E+1Pに、もう一つEを足している。もうひとつのEとは 「EXPAND YOUR BRAIN CAPACITY」(脳力を伸ばせ)である。
多くの人は50歳にもなると、「記憶力が衰えた」「疲れやすくなった」「いい歳だから」などと、なんとなく言い訳がましいことを言ったりする。50歳から老齢者のように思いこみ、脳力が落ちてくると信じこんでしまう。
最近脳科学の発達が著しいが、その観点からいうと、それは全くの思い込みでしかないことがわかっている。脳科学者によると「脳は100歳になっても鍛え方でどんどん伸びていく」と。
衰えてきた、老化が始まった、年齢が年齢だからと思っているから、どんどんそのような自分になってしまい、自分が持つ可能性を自ら閉ざしてしまっているのではないだろうか。以前に比べ食環境や医療分野の飛躍などにより、私たちの寿命は延び、元気に活動できる時間は確実に伸びている。65で定年だとし、仮に90歳まで生きると考えても25年もある、やれることはまだまだあるだろう。
自らの可能性を”思い込み”で閉ざしてしまうのではなく、脳をどのように鍛えていくのか、体をどのようにメンテナンスしていくのかをしっかりと考え、実行していく必要があると私は強く感じている。
因みにその脳科学者に「100歳以降脳はどうなるのでしょうか?脳はいつごろから衰えてくるのでしょうか?」 と尋ねると、その答えがふるっている。
「100歳までには貴方は亡くなっているでしょうから、まったく心配する必要がありませんよ」と。納得である。
私たちは、自らに対するリーダーシップを発揮することで、フォロワーに対するリーダーシップの影響力を高め、そして自らの無限の可能性を信じ、脳力を高めつづけることで、よりよい社会づくりに貢献し、活力の漲る人生を送っていきたいと思っている。